投稿日:2023.09.19
書店で流通されることを希望する方へ~思った通りにはいかない理由
本屋さんに自分の本が並ぶことを夢見ている人は少なくないでしょう。
自費出版といえど、出版したら当然のように本屋さんに自分の本が並ぶものだと思っている人も中にはいらっしゃるかもしれません。
しかし、現実には書店での流通は思った通りにはいきません。それは何故でしょう?
らく楽自費出版工房では書店流通希望冊数が300冊以上から書店流通オプションを承っていますが、正直に申しますとあまりおすすめはしていません。
その理由や本の流通の仕組みについて、詳しく見ていきましょう。
目次
日本の書店の現実を見てみよう
日本における2022年の書店の店舗数は11,495店あります。(出版科学研究所調べ)
その内、新規開業は81店、閉店は477店と、明らかな減少傾向にあります。
さまざまな理由の中で、日本の書店は苦境に立たされていることがわかるでしょう。
つまり、夢が叶って書店に自分の本が並べられても、購入してくれる読者は少ないのではないかという予測が立ちます。
また、書店の数は減少傾向にあるとはいえ、それでも1万店以上の書店があります。
自分の本を全国の書店に並べるためには、1万冊以上の部数を作らなければならないのです。
自費出版で文庫本を1万冊作るとお金はいくらかかるのか計算してみた
仮に日本の書店に1冊ずつ配本されるとして、そのために必要な1万冊の部数を自費出版で作ったとします。
条件は
- 文庫本サイズ
- 白黒印刷
- 300ページ以内
- カバーなし
- 書店流通オプションのみ
この場合、費用は3,278,000円(税込)かかります。300万円超です。
半分の5000冊で妥協するとしても1,980,000円(税込)と、ほぼ200万円になってしまいます。
この時点で現実的とは言い難い金額になってしまっていますね。
刷った本が全冊売れれば費用を回収することもできるかもしれませんが、自費出版の本が完売することは現実的に考えて至難の業だと言わざるを得ません。
著者様が売れ残った大量の在庫を抱えて困ってしまうことが予想されますので、1万冊もの本を刷ろうとするのはおすすめしません。
書店で「自分の本が平積み」がほぼ無理な理由
ここまで、全国の書店に1冊ずつ配本することが現実的ではないことを見てきました。
それなら「限られた店舗だけでいいから、自分の本が平積みで売られているところを見てみたい」という夢ならば叶えられるでしょうか?
現実的に考えて、これもかなり難しいです。
まず、平積みとは書店の貴重なスペースの中でも特に目立つ場所に本が広げられることだという前提を改めて理解する必要があります。
このスペースは、新刊やベストセラー、あるいは大手出版社からの強力なプッシュを受けている本など、特定の本のみが占有することが一般的です。何故なら十分な宣伝・プロモーション活動、そして何よりも売れる確信が必要だからです。
自費出版の本が「売れる確信」を持って書店の平積みスペースに並べられることは、とても難しいでしょう。大手出版社や既に知名度のある著者との場所の取り合いに勝たなければならないと言えるからです。なぜなら、本を置けるスペースに限りがあるからです。
可能だとしたら、よほど密接な関係にある地元書店がすでにあって、その書店1店舗だけで展開してもらうということなら叶えられるかもしれません。
本がお店に並ぶまでの通常の流れ
商業出版の本は一般的に、出版社から直接書店に卸されるわけではありません。
出版社と書店との間に取次業者という卸のような役割の会社が存在しています。
どの本を何冊どこの書店に並べるかは取次が決めて配本するため、出版社や書店の希望通りにならないことも多々あります。
自費出版でも通常はこの流れに沿って書店に配本されるため、著者が希望する書店に思い通りに本を並べることはできません。
たとえば、地元を舞台にした小説を書いたから地元書店で扱ってほしい、と思ってもその希望が叶うとは言い切れないのです。それを叶えようとすると、地元書店に営業活動をして、「ぜひ仕入れてください」とお願いするしかありません。
また、本が書店に配本されても、売れなければ書店から取次へ返本されてしまいます。
書店に並ぶことがゴールではなく、書店に並んだからといって必ず売れるわけではないということには注意が必要です。
らく楽自費出版工房での書店流通オプションの独自の取り組み
自費出版では著者様の望む形での書店流通が難しいため、らく楽自費出版工房では取次を介さない方法での配本を行っています。
書店流通オプションを希望された本は、まず書店が仕入れに使う専用のサイトに情報をアップロードします。
このサイトを通じて、その本を仕入れたいと思った書店だけに希望の冊数を仕入れてもらうのです。
また、サイトに掲載するだけでは情報を見つけてもらいにくい場合がありますので、全国の書店に本の情報をFAXで送信します。
書店流通オプションの費用(税込88,000円~)はこのFAX代が主に含まれています。
ただ、注意していただきたいのはこれで必ず書店の店頭に並ぶ保証があるわけではないということです。
いたずらにお金を消費したというパターンの方が多くなるかもしれないでしょう。
ただしこれは、取次店を通しても実は同じことで、とりあえず取次店を通して書店に配本されたが店頭に並ぶことなく返本されるということもあり得るのです。そして、取次店を通すのにも手数料はかかります。
らく楽自費出版工房の書店流通オプションは、取次店を通して配本するのと費用のかかり方が違うだけで、本質的には同じことなのです。
その意味でも、弊社ではオプションとして、書店流通をご用意していますが、慎重に判断されることを薦めております。
書店流通オプションのメリットとリスク
それでも「どうしても本屋さんに自分の本が並べられるという夢を諦められない」という方のために、書店流通オプションのメリットとリスクを考えてみましょう。
メリットよりもリスクの方が多くなりますが、それでも書店流通オプションを利用したいという方には、弊社も精一杯のサポートをさせていただきます。
自分の本が書店に並ぶのはやはりロマンがある
書店流通オプションを選ぶ理由、そしてメリットはロマンの一言に尽きるでしょう。
ある日、街を歩きながらたまたま入った書店の棚に、自分の名前とその作品が並んでいる。そんな瞬間を想像するだけで胸が高鳴る気持ちはとてもよくわかります。
書籍という形に物語や知識、情熱を詰め込み、それが読者の手に取ってもらえるというのは多くの著者にとって特別な体験でしょう。
近年増え続けているオンラインでの公開や電子書籍も素晴らしい存在ですが、物理的な存在感を持つ紙の本が実際の店舗で読者の目に触れ、手に取られるというのはやはり特別な魅力を持っています
このロマンは、作家であれば誰しもが一度は心に描く夢であり、追い続ける価値があるものだと言えるでしょう。
お金をかけても書店から注文されるとは限らない
書店流通オプションのリスクのひとつが、オプション料金を支払っても必ず書店からの発注があるとは限らないということです。
書店流通用に300部以上の冊数を確保している状態で、発注がなければそれらの本は売れ残った在庫として赤字の原因になってしまいます。
お金をかけたからといって必ずしもリターンがあるとは限らないのが書店流通オプションを利用する上で慎重になっていただきたい点のひとつです。
自分の本が書店に並ぶ夢を諦めきれない気持ちもわかりますが、その実現のための投資とそのリスクをきちんと理解しておくことが非常に大切です。
夢を追い求めることは素晴らしいことですが、同時に経済的なリスクやその後の在庫管理の問題も真剣に考慮する必要があります
特に初めての出版や自費出版の場合、知名度や需要を正確に予測するのは難しいものです。よって予算の範囲内で無理なく取り組むこと、そして冷静な判断で計画を進めることが、後悔をしないために重要になってくるでしょう。