
内容説明
広告は、テレビ、ラジオ、新聞・雑誌、インターネットなどの媒体を通して、消費者に自社の製品やサービスの情報を提供している。テレビ広告であれば、企業が広告代理店に広告の製作を依頼し、視聴率の高いテレビ番組のスポンサーとなり、番組内でCMとして広告を流している。この過程で広告製作や広告料として巨額の資金が使われている。広告研究では、これまで多くのテレビ広告を調べ、どのような広告が人気であるか、インパクトがあるかなどを調べてきた。
しかしながら、テレビ広告のどのような内容が消費者の認知に影響を与え、購買意志などの態度や購買行動を変化させているかについては、十分な分析がなされてきたとは言えない。本書の研究では、実験刺激としてのテレビ広告を視聴させ、反応として態度や行動を測定するだけではなく、その際の消費者の認知や感情も測定することで、消費者が何を考え、何を感じていたかを明らかにした。広告の視聴において、消費者が広告のどの内容を見て、何を考え、どのような感情を生起させたかを知ることができれば、広告製作場面においても、より効果的な広告情報の挿入にも役立つであろう。
本書は、著者が実施した「広告効果に及ぼすコンテンツ情報の影響とその情報処理過程に関する研究」(科研費基盤研究(C))を経営の視点から再構成したものである。これまで広告研究では、広告刺激に対して、消費者の商品評価、広告評価、購買意図などの反応だけが測定されてきた。本書では、テレビ広告に限定して、広告の中におけるコンテンツ情報(内容)が、消費者の情報処理過程とその最終的効果に与える影響を検討した。CMの登場人物の印象、商品特性などの情報が、広告の評価、商品の評価にどのような影響を与え、最終的な購買意図につながっているかを実験により調べた。広告の消費者への影響過程が明らかになり、より効果的な内容が判明することは、広告に巨額な予算を投じている企業にとって、経営戦略としても非常に意義のあることであろう。これから、経営における消費者心理、消費者行動などを研究する大学生、大学院生、若手研究者にぜひとも読んでいただきたい。