内容説明
~世界で活躍する声楽家を目指すならば、これを読まずして挑むことは、無謀なことだと私は思う~
道楽者よサヨウナラ、
此の本は全ての若者に当てはまるが、特に将来声楽家を志す者には、本当になりたければ初心を通す事であると。
更に日本で道楽と見なされているオペラを歌い、それで並みの生活が出来る収入を得、安定した老後が迎えられる。此のオペラの本場の様な職場を確保する為に全力でぶつかり、道楽からサヨウナラをして欲しい、との思いを込めて書かれた物語である。
芸大声楽科を出た主人公、大山剛と幸夫婦は、オペラの本場と言われるヨーロッパ、ウィーンに留学する。
そして歌で食うとの信条を貫きたい二人は、声楽家の職場である劇場数が最も多いドイツに職を得て30年、当地で老後を迎えた。
そこに至るまで、日本人が背負うハンデキャップ、苦難と犠牲を伴った二人の人生は、もし日本に歌で食える職場が整っていたならば、辿らなくて済んだ道だったかも知れない。
だから日本の若者達がオペラの本場に、ただ憧れを抱くだけなのであれば、あえて二人と同じ道を辿る事はないのだ。日本の現状にあって、歌で食う為に初心を通すとは、徹底して一度きりの人生を、祖国を離れ本場に据えるか、日本にとどまり歌で食う道を確保する事に突き進むか、なのである。
二人は前者を取った。そして何故ヨーロッパがオペラの本場なのかを身をもって知った。
この事を日本の声楽家を志す若者達に伝えられるなら、二人の辿った人生に意義を見出せるだろう。
人が何かについて発言するには、それへの裏付けが無ければ確証に欠ける。
正に二人の人生は、此の裏付けその物なのである。
本の読者には声楽畑の人達のみならず、一般の人達にもこんな世界があったのか、昔はそんな事もあったのかと識る事で、オペラを歌う者達への認識を新たにしてもらえると期待する。